【開催報告】AMRアライアンス・ジャパン 緊急フォーラム「抗菌薬の安定供給と抗菌薬市場の危機~G20に求められる世界規模での官民パートナーシップ~」(2019年10月7日)
日付:2019年10月20日
AMRアライアンス・ジャパン(事務局:日本医療政策機構)は2019月10月7日、緊急フォーラム「抗菌薬の安定供給と抗菌薬市場の危機~G20に求められる世界規模での官民パートナーシップ~」を開催いたしました。
毎年、世界中で少なくとも約70万人もの人が薬剤耐性(AMR: Antimicrobial Resistance)菌感染症により死亡していると考えられています。このまま対策が取られなければ、2050年には年間死亡者が約1000万人にまで上昇するとの予測もあり、現在、世界規模でAMR対策が進められています。AMRアライアンス・ジャパンも、2019年7月に「AMRアライアンス・ジャパン提言 薬剤耐性(AMR)対策 AMRに向け日本政府が果たすべき役割 」を発表し、7つのテーマに関する具体策を提言しています。
本フォーラムでは、AMRアライアンス・ジャパンによる同提言の具体策のうち、特に「抗菌薬開発を促進するインセンティブ・モデルの策定」、「抗菌薬の安定供給」、「国内外の好事例や教訓を共有するための国際連携」に焦点を絞り、議論しました。
AMR対策においては、抗菌薬の適正使用が重要となりますが、昨今、その前提となる抗菌薬の供給が不安定となり、感染症治療や周術期感染の予防などの標準的な医療行為に問題が発生している。一方で、現在流通している医薬品の多くは世界各国に広がる医薬品製造所に依存している状況であり、一国の努力では、医薬品の安定供給の問題に対処ができない状況です。これらを踏まえ、既存の抗菌薬の安定供給は安全保障や危機管理の観点からも検討する必要があるとの認識が共有されています。さらに、抗菌薬については、市場性や採算予見性の低さゆえ、国内外で市場が崩壊しており、現状のままでは新たな抗菌薬の研究開発はもとより、既存の抗菌薬の安定供給という使命さえ果たすことが難しい。したがって、産官学民が連携しながら、抗菌薬の産業構造や開発環境を含めた危機的状況を打開する糸口を見つけることは、AMR対策の観点からも、また、我が国そして世界の安全保障の観点からも極めて重要な課題といえます。
本フォーラムは、2019年10月に予定されているG20岡山保健大臣会合の開催に先立ち開催されています。保健大臣会合では、本フォーラムの議論が反映され、G20 保健大臣会合では、「抗菌薬の安定供給」および「抗菌薬の市場開発」に向けた包括的かつ実効性のある議論が期待されます。
本フォーラムの議論をもとに、「AMRアライアンス・ジャパン 緊急フォーラム報告 抗菌薬の安定供給の確保と抗菌薬市場の改善に向け G20各国に求められる役割」をとりまとめました。詳しくは、本ページの末尾のPDFファイルをご覧ください。
■概要
開催趣旨説明
乗竹 亮治(特定非営利活動法人 日本医療政策機構 理事・事務局長/CEO)
開会の辞~AMRアライアンス・ジャパンを代表して~
吉田 正樹(東京慈恵会医科大学感染制御科 教授)
講演1「抗菌薬の安定供給―臨床現場の状況と今後への期待―」
松本 哲哉(国際医療福祉大学医学部感染症学講座 主任教授)
講演2「抗菌薬の供給に関する世界的な動向」
具 芳明(国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンター情報・教育支援室長)
講演3「AMR対策における最新の世界動向と日本のリーダーシップへの期待」
Jeremy Knox(ウェルカムトラスト 薬剤耐性感染症プログラム 政策・アドボカシーリード)
※イギリスからライブストリーミング中継
パネルディスカッション「薬剤耐性(AMR)の観点から、抗菌薬の安定供給を考える」
パネリスト
日下 英司(厚生労働省 健康局 結核感染課長)
井上 肇(国立国際医療センター 企画戦略局長)
清田 浩(日本化学療法学会 理事長/東京慈恵医科大学葛飾医療センター 泌尿器科 教授)
澤田 拓子(塩野義製薬株式会社 取締役福社長)
モデレーター
柴田 倫人(特定非営利活動法人 日本医療政策機構 シニアアソシエイト)
閉会の辞
武見 敬三(参議院議員)