【開催報告】特別議員勉強会「薬剤耐性問題に関するG7日本開催を見据えた国際連携の展望」(2023年2月28日)
日本医療政策機構は、世界保健機関(WHO: World Health Organization)などにより設立されたAMRグローバル・リーダーズ・グループと共催し、特別議員勉強会「薬剤耐性問題に関するG7日本開催を見据えた国際連携の展望」を開催いたしました。
今回は、本テーマで長年にわたり国際的な議論をリードされ、現在は英国政府の薬剤耐性(AMR: Antimicrobial Resistance)に関する特使を務められているDame Sally Davies氏から、AMRがグローバル経済に与える影響や抗菌薬イノベーションの重要性、ワンヘルス等についてお話しいただきました。
講演後にはご参加いただいた国会議員の方々より多くのご質問をいただき、活発な意見交換の場となりました。
■趣旨
薬剤耐性は世界で猛威をふるっており、薬剤耐性が直接起因する世界の年間推定死亡者数は、約127万人と英医学誌上で2022年に報告されました。薬剤耐性は「サイレント・パンデミック」や「コロナ禍の次に来る脅威」などとも呼ばれています。新規の抗菌薬の開発が遅れるなか、G7をはじめ国際社会において、国際協調の必要性が議論されています。
<講演のポイント>
- 抗菌薬は、HIVやマラリアを含む感染性疾患のみならず、がん治療や様々な手術を安全に行うために必要不可欠である。一方、新たな薬剤耐性菌の出現や薬剤耐性菌感染症の伝播に伴い、現存する抗菌薬の効果が落ちている。がん領域でも今後5年で治療の選択肢が狭くなると予想されている。抗菌薬の効果が失われると、歯科治療や帝王切開で命を落とす可能性がある
- AMR対策は国家安全保障や経済安全保障の枠組みでも重要である。代表的な抗菌薬40品目の原薬の製造拠点はインドや中国に集中している。また、このままAMR対策を講じなければ、2050年までに世界で100兆ドルの経済損失が生まれ、GDPの大幅な減退にも繋がると予測されている
- 抗菌薬市場は崩壊しており、新しい抗菌薬が継続的に上市される環境を再構築する必要がある。1980年代後半以降、新規系統(クラス)の抗菌薬は臨床現場や患者の手元まで届いておらず、日本国内で新たに承認された抗菌薬でさえこの30年間で半減している
- 日本や英国で、抗菌薬の市場構造を再構築し、イノベーションを支援するプル型インセンティブの導入が始まっている。日本は2023年度予算案で11億円を計上し、「抗菌薬確保支援事業」の検討を進めている。新規抗菌薬が継続的に上市される環境を再構築するためには、抗菌薬を製造する企業の売上を一定額保証し、抗菌薬事業の予見性を高める必要がある
- 抗菌薬は公共財であり、国際連携のもとでプル型インセンティブの導入等を通じた市場構造の改善やワンヘルスアプローチに基づくAMR対策を進める必要がある。2023年G7広島サミット議長国として、日本がAMR対策を主導し、リーダーシップを発揮することが期待される
【プログラム】(すべて通訳あり)※敬称略
開会挨拶
塩崎 恭久(AMR グローバル・リーダーズ・グループ メンバー/元厚生労働大臣)
ご挨拶
武見 敬三(参議院議員/日英 21 世紀委員会 日本側座長)
横倉 義武(日本医師会 名誉会長)
藏内 勇夫(日本獣医師会 会長)
講演 「薬剤耐性問題に関する G7 日本開催を見据えた国際連携の展望」
Dame Sally Davies(英国政府 AMR 特使/AMR グローバル・リーダーズ・グループ メンバー)
質疑応答