【政策提言】骨太の方針2024策定に対する提言 薬剤耐性(AMR)対策の促進に向けて(2024年6月11日)
AMRアライアンス・ジャパン(事務局:日本医療政策機構)は、2024年6月11日に薬剤耐性(AMR: Antimicrobial Resistance)感染症対策を進めるため、下記の文言を経済財政運営と改革の基本方針2024(骨太の方針2024)に盛り込むことを提言いたしました。
薬剤耐性対策にあたっては、ワンヘルス・アプローチを推進するとともに、市場インセンティブを通じた治療薬の確保や研究開発を産官学民で議論及び推進し、経済等の安全保障に貢献しつつ、国際的にも主導的な役割を果たす。
2022年2月、英医学誌「Lancet」での報告によって、AMRが直接起因する世界の年間推定死亡者数(2019年)が127万人にのぼり、HIV/AIDS、マラリアの死者数を上回ることが明らかになりました。また、薬剤耐性菌による日本の死亡者数は年間約8,000人と推定されています。これはわずか2種の薬剤耐性菌による数値であり、薬剤耐性全体の被害規模は極めて大きいと考えられます。こうした背景の下、国内外で薬剤耐性対策が進んでいます。
国際的には、国連食糧農業機関(FAO)、国連環境計画(UNEP)、世界保健機関(WHO)及び国際獣疫事務局(WOAH)の「四機関(Quadripartite)」によって、2022年10月に「ワンヘルス共同行動計画(2022-2026)」が策定されました。G7サミットやG7の閣僚級会合(財務・保健・農業・環境)の成果文書においても、ワンヘルス・アプローチによるサーベイランスや検査、予見可能かつ持続可能なインセンティブによる抗菌薬の市場構造の健全化、研究者を含む人材の育成といったAMR対策の重要性が指摘されています。
また、日本の骨太の方針においては、2016年から毎年「薬剤耐性(AMR)対策の推進強化、研究・検査・治療体制の充実」等が盛り込まれ、AMR対策の重要性が強調されてきました。とりわけ、骨太の方針2023では、「ワンヘルス・アプローチを推進するとともに、薬剤耐性対策において、市場インセンティブによる治療薬の確保等の国内対策や国際連携・産学官連携による研究開発を推進する」というより踏み込んだ文言となり、産官学民連携の下、抗菌薬の持続的な安定供給体制の維持・強化を含め、予防・診断・治療の全ての領域における総合的なイノベーションの重要性が強く認識されています。これは経済及び健康の安全保障にも寄与するものです。
薬剤耐性を含む感染症対策は、自国ないし特定の領域のみでは完結しません。日本は、2023年G7議長国としてのリーダーシップを含め、国際的な保健の議論を主導しています。AMR対策においても、2024年国連総会ハイレベル会合やその先を見据えて、国際社会における責務を果たすことが重要です。